経営破たんした第３セクター「赤穂駅周辺整備事業」をめぐり、最高裁が昨年６月に北爪照夫元市長ら旧役員２人に約１億３０００万円の支払いを命じた損害賠償請求について、赤穂市は１２日、同社と北爪氏らとの間で支払い方法の合意書が締結されたことを発表した。合意条件を基にした試算では、元金を払い終えるのに１３０年以上、金利分を含めた賠償が完済するには約６００年を要する。完全回収を事実上放棄する合意内容に市民からは「誰が生きているんだ。怒りを通り越してあきれた」といった声も聞かれる。
　同社によると、北爪氏らは同社に来年３月末までに一時金として３４００万円を支払う。残額は今年７月から月々８万円を分割払いし、平成２４年２月と２９年２月に１回あたりの支払額を１万円ずつ減らす。２人の賠償割合は不明。１０日の同社取締役会で全会一致で議決し、１２日に合意書を締結した。
　この支払い条件では元本の支払いを終えるのに１３０年以上が必要。さらに確定判決では、元本の残額に年５分の金利を加算することになっているため、元利すべての完済は約６００年かかる見通し。当事者が死亡して親族が相続放棄した時点で債務は消滅し、その後の弁済は行われないという。
　損害賠償事案に詳しい専門家はこの合意内容について、「一般論としては、債務者に有利な条件。実質的に債権の大半をあきらめるに等しい」とした上で、「債務者の支払い能力に見合った条件になっているのかどうかがポイント」と話す。
　市によると、市長職を３期務めた北爪氏は退職金だけで約６２００万円の収入を得ている。同社は「個人の財産を調べることは困難。相手方からの申告を基に交渉した」とし、財産査定など具体的な交渉過程については「報告する義務はない」と市へも報告していない。
　合意内容を知った加里屋の５０代自営男性は「不動産の査定調査など、どこまで真剣にやったのか。甘過ぎるのではないか」と怒りを表した。尾崎の７０代男性は「なぜこのような不合理な合意になったのか、市民の前に公表すべきだ」と情報公開を強く求めるなど、経営破たんの損失補償に２７億３０００万円の税金を投入する形でツケを払わされた市民の理解は到底得られない結果となった。
　同社は今後入金される賠償金について、「弁護士費用に充当するなど使途を協議していく」と話している。
　▼赤穂駅周辺整備現社長の豆田正明市長のコメント＝「損害賠償金の支払いについての合意がなされたことは、この問題における責任の所在が名実ともに明確になったものと考えております」

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関連サイト：
■あこうリサーチ「３セク損害賠償、「完済に６００年」の条件をどう思う？」


掲載紙面（PDF）：
2009年6月20日(1852号) 1面 (7,408,549byte)
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