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「元祖タイガーマスク」愛情贈って30年

 2017年12月23日 
児童養護施設の子どもたちへのプレゼントを30年間続けている男性
 児童養護施設の子どもたちに文具の寄贈やクリスマスケーキの差し入れなどを30年にわたって続けている男性が匿名を条件に赤穂民報の取材に応じ、「子どもたちに手を差し伸べる人が一人でも多く現れてほしい」と活動を続ける思いを語った。
 「きっかけは本屋で会った一人の中学生でした」
 男性は今から30年前、西宮市内の書店で学生服姿の少年が参考書の棚の前を行ったり来たりしているのを見かけた。
 万引きするつもりかも−と疑いを持ちつつ、「欲しい本があるんやったら親に買うてもらえ」と声を掛けると、「親はおらへん」と返ってきた。聞けば、苦楽園にある児童養護施設で生活しているという。
 当時はバブル景気がピークを迎えていた頃。世の中にぜいたくがあふれる一方、さまざまな事情で親と離ればなれで暮らし、買いたい本も買えずに辛抱している子どもがいるという現実にショックを受けた。アルコールをたしなまない男性は「酒を飲んだと思って」と財布にあったお金で参考書や絵本を購入し、匿名で施設に届けた。
 これをきっかけに「足長おじさん」やボクシング漫画の主人公「矢吹丈」を名乗って県内の施設に図書券や文具、スポーツ用品を贈ることを始めた。物品だけでなく、クラシック奏者を派遣してミニコンサートをプレゼントしたり、子どもたちを潮干狩りに招待したりしたこともある。「ありがた迷惑」にならないよう、事前に施設に電話して子どもの人数や希望日を確認するが、本名や住所を明かしたことはない。
 数年前、「伊達直人」や「タイガーマスク」を名乗って施設にランドセルを贈ることが社会現象になった。「これで運動の輪が広がるのでは」と期待したが、一過性のブームに終わった感が否めない。男性が本紙の取材に応じたのも、「記事が出ることで、一人でも行動に移してくれる人が現れてほしい」との思いからだ。
 風のたよりに、かつて施設にいた児童の就職や結婚を知ることがある。心の中で喜びつつ、「幸せな家庭を築いて、社会に恩返しできる人間になってほしい」と願う。「自分の命ある限り、続けるつもりです」。男性はこのクリスマスも西播磨地区の児童養護施設5施設にケーキを贈る。
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掲載紙面(PDF):
2017年12月23日(2259号) 3面 (11,696,060byte)
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