赤穂の昔話・第31話「東海山の観音様」(下)
2021年11月27日
切り絵・村杉創夢
光るものをみたという海底に網を入れて引き上げていくと、網底に光るものが見えました。
それは大人の背たけよりも大きな観音さまの立った姿の像でした。あちこちに牡蠣の殻がついていましたが、神々しく光り輝いていました。
「有難いことじゃ。もったいないことじゃ。これは、この村にさずかったものじゃ。どこかにお祀りせにゃあ」
安左衛門さんは大そう喜び、観音さまを東海山に造ったお堂に祀りました。
ある年の冬、岡山の西大寺のお詣りから帰ってきた人が、安左衛門さんを訪ねてきました。
「旦那はん、西大寺はんの観音さんと、ここの観音さんはそっくりだっせ。姿も、もちものも、よう似とります」
安左衛門さんは、さっそく西大寺へでかけました。聞いたとおりでした。西大寺のお坊さんは次のように話をしてくれました。
むかし、この寺には同じ形の観音さまを二体並べてお祀りしていました。ある時、備前の殿様が治りにくい病気にかかられました。そこで、観音さまに「病気が治りますように」と願をかけたのですが、少しも良くなりません。腹を立てた殿様は、「わしの願いをきいてくれない観音さまなど祀る必要はない。捨ててしまえ」と家来に命じ、観音さまは川に投げこまれてしまいました。一体は、川を流れて海に出てしまいましたが、もう一体は、何度捨てても西大寺に帰ってきました。それが、この観音さまです……。
この話を聞いて、安左衛門さんは納得しました。似ているのも道理、東海山の観音さまは、もとは西大寺の観音さまだったのです。東海山の観音さまは、いまは御崎にはなく、加西市のある人が持ち帰って、祀っているということです。(赤穂市教育委員会刊『赤穂の昔話』・「東海山の観音さま」より)
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2021年11月27日号(2440号) 3面 (7,545,381byte)
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