赤穂の昔話・第2話「謎を秘める島」
2019年06月08日
「あそこの山に上がって、足踏みしてみい。ドン、ドンと、よう響くぞ」
「ほんまや、ほんまや。あの島の中には、昔の唐の船が埋まっとるんやてえ、おじいがいよったぞ」
「エッ、ほんまか。なんで船が埋まったんやろなあ」
おじいさんに話してもらったことを、男の子は得意になって話しました。
それは、昔むかし、中国の唐の国と国交が行われ、日本から遣唐使が送られ、唐から答礼使がやって来ていたころのことです。唐の船が、河口の浅瀬に乗りあげて動けなくなり、その上に土や砂がたまって、島になってしまいました。そのために、島の中に、大きな船の形の空洞ができて、上で足踏みすると、ドンドンと音が響くのだ、というのです。
この島には、次のような話もあります。
室津の沖に、「地の唐荷島」「中の唐荷島」「沖の唐荷島」という小島が三つ並んであります。この三つの「唐荷島」も「唐船島」も、もとは「韓荷島」「韓船島」と書いていました。
むかし、韓(朝鮮)の使節の船が日本にやってくると、室津に上陸して、そこから陸路で都に向かっていました。この時、室津に上陸する前に、まず韓(唐)船島に船をとめて、その船団の偉容をととのえ、室津沖の韓荷島で荷物や服装をととのえてから上陸しました。そういうことから、韓船島と呼ぶようになった、ということです。
また、江戸時代に、朝鮮の慶賀使がやってきて、上陸準備のために、この島に船をとめていたとき、新浜村(御崎)の暴れん坊が夜中に船に忍び込んで財宝を盗み、捕らえられて始末書を書かされ、その書類が新浜村の役場に保管されていたのを見た人があったとも伝えられています。
いずれにしても、ドン、ドンと響く音は、人々にいろいろな空想を楽しませてくれます。(赤穂市教育委員会刊『赤穂の昔話 第二集』・「謎を秘める島」より)=切り絵・村杉創夢
<前の記事 |
掲載紙面(PDF):
2019年6月8日号(2328号) 4面 (9,171,964byte)
(PDFファイルを閲覧するにはこちらからAdobe Readerを入手してください。)
[ 赤穂の昔話 ]
「昔話末永く語り継いで」切り絵作家・村杉創夢さん 2022年10月30日
赤穂の昔話・第38話「尼子山落城」 2022年10月29日
赤穂の昔話・第37話「きんこん坊主」 2022年07月16日
赤穂の昔話・第36話「横谷の八畳敷き」 2022年05月21日
赤穂の昔話・第35話「大蛇と入電池」 2022年04月29日
赤穂の昔話・第34話「竹筒で塩を作る人を見た」 2022年03月19日
赤穂の昔話・第33話「ととまの地蔵」(下) 2022年03月12日
赤穂の昔話・第33話「ととまの地蔵」(上) 2022年02月12日
赤穂の昔話・第32話「枯れ尾花」 2022年01月29日
赤穂の昔話・第31話「東海山の観音様」(下) 2021年11月27日
赤穂の昔話・第31話「東海山の観音様」(上) 2021年11月11日
赤穂の昔話・第30話「とんぼ塚」 2021年10月30日
赤穂の昔話・第29話「妙道寺の阿弥陀さま」 2021年08月28日
赤穂の昔話・第28話「猫岩の狐」 2021年07月31日
赤穂の昔話・第27話「蛸の足うまいか」 2021年07月17日
コメントを書く