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赤穂の昔話・第1話「亀の恩返し」(上)

 2019年05月11日 
 
 今号より新コーナー『赤穂の昔話』の掲載を始めます。
 赤穂市文化財調査報告書『赤穂の昔話』(発行・赤穂市教育委員会)に集録された市内に伝わる昔話をベースにオリジナル挿絵付きで紹介します。
 挿絵を担当するのは、赤穂出身の切り絵作家、村杉創夢さん(74)=東京都町田市、本名・克彦=です。物語とともにお楽しみください。
 第1回は「亀の恩返し」です。
 ▽村杉創夢さんの談話=「高校卒業まで赤穂で暮らしましたが、こんなにたくさんの昔話が赤穂に伝わっているとは知りませんでした。故郷を思い浮かべながら挿絵を制作することは私にとっても楽しみです」

 * * *

 有年の楢原に伝わっている話です。
 楢原の千種川沿いに、放亀(ほうき)というところがあります。ここは一年に何度も洪水にみまわれ、お百姓さんたちが植えた稲の苗が流れてしまうところでした。
 江戸時代のころです。楢原のお百姓さんたちは「アーア。今年はこれで三度目じゃ」と、毎年天をみあげて、ため息をついたものでした。
 いつまでも、ため息ばかりついておれません。早く苗を植えかえて稲を作らなければ、食べていくことも、領主に年貢を納めることもできません。洪水にもめげずに一生懸命働きました。しかし、楢原のお百姓さんは朝早くから日がとっぷりと暮れるまで働きつづけても、やっと生活ができるような貧乏な暮らしをしていました。
 ある年のことです。この年も何度目かの洪水にみまわれ、稲が流されてしまいました。いつものように苗の植えかえをしていると、足元で何かがゴソッ、ゴソッと動いています。お百姓さんは気落ちが悪くなって場所をかえました。でも、しばらくすると、また足元がゴソッ、ゴソッと動くのです。(つづく)
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掲載紙面(PDF):
2019年5月11日号(2324号) 3面 (9,297,055byte)
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