さなぎ観察調査で初の研究例
2018年01月20日
ジャコウアゲハの羽化について調査報告書を刊行した=左から=尼子さん、木村さん、山下さん
報告書はA4判17ページで100部発行。ジャコウアゲハの幼虫が餌とする薬草のウマノスズクサについて調べている南野中の木村繁之さん(82)=元兵庫県薬剤師会副会長=が地元の尼子公一さん(73)=高雄=と山下一之さん(71)=木津=と協力して調査してまとめた。
高雄地区にはウマノスズクサが自生。3年ほど前から地域の除草作業で刈り取らずに残すようにしたところ、ジャコウアゲハの幼虫やサナギを見かけるようになった。3人は「どの程度の割合で羽化するのだろう」と興味を持ち、昨年3月から観察を始めた。
さなぎのそばに通し番号を書いたシールを貼り、個体ごとの変化を記録。5月中旬まで観察した結果、20匹中9匹が天敵の寄生蜂に食べられ、3匹が風で飛ばされていなくなり、4匹が羽化しないまま死んだ。無事に羽化できたのは4匹だった。
本州北部から南西諸島にわたって分布するジャコウアゲハは年に2〜4回発生し、暖かい地域ほど回数が多いことが知られている。木村さんらは6月以降も交替で毎日現場を訪れて観察を継続。10月下旬までの間に4回にわけて合計178匹のさなぎが発生し、59匹が羽化。シーズン通しての羽化率は33%となった。
観察結果を詳しく分析したところ、第2期(6月〜7月)は34匹中29匹が羽化。「寄生蜂による被害が皆無」で羽化率は85%に上った。第3期(7月〜8月)は最多の84匹が発生したにもかかわらず成虫になったのは10匹で羽化率は12%にとどまり、「高温多湿と幼虫の増加に伴う餌不足が影響」と考察した。また、羽化の時間帯は午前7時から10時に集中していることもわかった。
報告書について、日本蝶類科学学会の北原曜(ひかる)・学術委員長(信州大学名誉教授)は「羽化率の違い、死因を数量的に調べた結果は新知見で非常に貴重」と評価した上で、「ジャコウアゲハについては未だに解明されていないことも多くあるので、ぜひ今後も継続観察して得られた知見を公表してほしい」とエール。3人はすでにサナギのまま冬を越す個体の観察に入っているという。
3人は「高雄にはジャコウアゲハの他にも希少植物のハマウツボなど豊かな自然がある」として観察調査の対象を広げ、報告書をシリーズ化する希望を持っており、「興味や関心が高まるきっかけになれば」と話している。
<前の記事 |
掲載紙面(PDF):
2018年1月20日(2263号) 1面 (7,825,392byte)
(PDFファイルを閲覧するにはこちらからAdobe Readerを入手してください。)
「声楽の甲子園」初の2年連続県代表 [ 文化・歴史 ] 2022年09月26日「ひょうご五国」巡回展 赤高生が音声ガイド [ 文化・歴史 ] 2022年09月17日「赤穂緞通の魅力伝えたい」織り手志望の女性が絵本 [ 文化・歴史 ] 2022年09月09日絵手紙始めて3年 95歳初の作品展 [ 文化・歴史 ] 2022年09月05日逸話でひもとく史実の元禄赤穂事件 [ 文化・歴史 ] 2022年09月04日義士外伝の新作歌舞伎『荒川十太夫』10月に歌舞伎座 十州塩田の作業唄一堂 赤穂からも出演 [ 文化・歴史 ] 2022年09月02日市史編さん課長が語る元禄赤穂事件の逸話 詩吟体験教室の子どもたちが奉納吟詠 JR有年駅に埴輪の絵画 故堂本隆也さん遺作 [ 文化・歴史 ] 2022年08月13日市民文化祭 短歌会と俳句会の作品募集 日本遺産写真展 作品を公募 県展2022 3部門で3人入選 [ 文化・歴史 ] 2022年08月10日「角立てない」伝統の書体 播磨提灯 気持ちや思い自由に表現「デザイン書道」 [ 文化・歴史 ] 2022年08月04日
コメントを書く