高校生が特大銅鐸復元にチャレンジ
2018年09月22日
鋳型から取り出した銅鐸をブラシで磨く相生産機械科の生徒たち
19日にはコークス炉で溶かした金属を鋳型に流し込む「鋳込み」を行い、ほぼ完全な形に鋳造。細部を補修して完成させた上で赤穂市へ寄贈する予定で、生徒らは「どんな音が鳴るか楽しみ」と出来上がりに期待しながら仕上げを進めている。
同校機械科では平成26年度から3年生の選択授業の一つに「銅鐸復元」を導入。当初は失敗の連続だったが、地元の金属加工会社から技術を教わり、さらに国宝の銅鐸レプリカも手掛ける京都の金工作家、小泉武寛(ぶかん)氏(73)からも助言を受けた。これまでに複数の銅鐸復元に成功して自治体や博物館などへ寄贈する実績を挙げ、昨年には兵庫県立考古博物館の特別展「青銅の鐸と武器」に作品が展示された。
5年目となる今年度は生徒6人が上高野銅鐸鋳型片を基にした復元品と、別名遺跡出土銅剣(有年考古館所蔵、赤穂市指定文化財)のレプリカ製作にチャレンジ。夏休みまでに銅剣の複製に成功し、2学期からは銅鐸の復元に挑んできた。市歴博が鋳型片から作った樹脂製の銅鐸レプリカから鋳型を製造。材料として必要な銅は電気科の実習で出た電線の切れ端を集め、一本一本皮膜を取り除いて調達した。
今月5日の1回目の鋳込みは流し込んだ金属が片側に偏って失敗。融解した金属を炉から鋳型まで運ぶ間に温度が下がってしまったことが一因とみられ、そのときの反省点から工程を見直した。2回目となった19日の鋳込みでは、運搬容器を1人持ちから2人持ちに改良したことでスピードを短縮。さらに、あらかじめ容器を熱しておき、適温をより長く維持できるように工夫した。
鋳型から取り出した銅鐸に生徒たちがブラシをかけると、黒いすすの下から新品の十円硬貨のような美しい光沢が表れた。一部に欠損が確認されたが、「鋳掛け」と呼ばれる補修を施すことで対処できるという。
「1回目よりも良い出来だったことがうれしい」と橋本貫生君(17)。将来金属加工の仕事に就くことを志望している八木颯君(17)は「表には見えない地道な準備や作業の大切さを実感した」と話した。プロジェクトを指導する竹下邦彦教諭(58)は「生徒たちには、この経験を自信にして、たとえ物事がうまくいかなかったときでも、あきらめずに工夫してゴールを目指す気持ちを持ってほしい」と語った。
◆上高野銅鐸鋳型片=大正5年ごろ、上高野の千種川河原で近所の主婦が見つけた。10年間ほど漬物石に使われた後、刻まれた文様が菩薩像の光背に似ていたことから石仏の一部として地域住民が地蔵堂に祀り、昭和51年に赤穂市文化財調査委員だった松岡秀夫氏の調査で銅鐸鋳型の一部であることが判明。砂岩製で高さ24センチ、重さ23・2キロ。この鋳型から作られた銅鐸の全長は約80センチと推定でき、弥生時代中期の銅鐸としては全国最大とされる。平成5年に兵庫県有形文化財に指定された。
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2018年9月22日(2294号) 1面 (3,957,458byte)
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