赤穂の昔話・第29話「妙道寺の阿弥陀さま」
2021年08月28日
切り絵・村杉創夢
牡蠣の殻でおおわれたものを手にした漁師は、「これは普通のものではない」と、ていねいに殻をとりのぞきました。
何と、そこには阿弥陀さまの、おだやかな顔があらわれてきました。
「これは、これはもったいないこっちゃ。わしに祀ってくれということにちがいない。はよう持って帰り、お祀りせにゃ」
と、漁をやめ、高砂に帰ろうと途中まで来ると、舟は坂越の方にぐるっと向きをかえるのです。
漁師は、力いっぱい高砂の方に向きをかえ、舟をこぐのですが、やっぱり坂越の方に向いてしまい、帰ることができません。
これまで、こんなことがあったためしがなく、不思議に思った漁師は、
「これは、舟に積んでいる阿弥陀さまが、高砂に行きたくないんや。坂越に縁があり、ここで祀ってほしいのにちがいない」
と思い、坂越の港に引き返しました。
そして、坂越の漁師に、
「是非、この土地に、お祀りして下さい」
と頼むと、坂越の漁師も心よく引き受けたので、高砂の漁師は無事家に帰ることができました。
今でも背中に牡蠣の殻のついた阿弥陀さまが、妙道寺に祀られていると言われています。(赤穂市教育委員会刊『赤穂の昔話 第二集』・「妙道寺の阿弥陀さま」より)
<前の記事 |
掲載紙面(PDF):
2021年8月28日号(2429号) 3面 (5,770,893byte)
(PDFファイルを閲覧するにはこちらからAdobe Readerを入手してください。)
[ 赤穂の昔話 ]
「昔話末永く語り継いで」切り絵作家・村杉創夢さん 2022年10月30日赤穂の昔話・第38話「尼子山落城」 2022年10月29日赤穂の昔話・第37話「きんこん坊主」 2022年07月16日赤穂の昔話・第36話「横谷の八畳敷き」 2022年05月21日赤穂の昔話・第35話「大蛇と入電池」 2022年04月29日赤穂の昔話・第34話「竹筒で塩を作る人を見た」 2022年03月19日赤穂の昔話・第33話「ととまの地蔵」(下) 2022年03月12日赤穂の昔話・第33話「ととまの地蔵」(上) 2022年02月12日赤穂の昔話・第32話「枯れ尾花」 2022年01月29日赤穂の昔話・第31話「東海山の観音様」(下) 2021年11月27日赤穂の昔話・第31話「東海山の観音様」(上) 2021年11月11日赤穂の昔話・第30話「とんぼ塚」 2021年10月30日赤穂の昔話・第28話「猫岩の狐」 2021年07月31日赤穂の昔話・第27話「蛸の足うまいか」 2021年07月17日赤穂の昔話・第26話「熊見川の由来」 2021年06月27日
コメントを書く