赤穂の昔話・第33話「ととまの地蔵」(上)
2022年02月12日
切り絵・村杉創夢
鎌倉時代の終わりころ、治安はみだれ、あちこちに悪党とよばれる盗賊の集団が生まれ、平和にくらしていた村をあらしまわるようになりました。村人も、米や麦を取られては困ります。みつからないように上手にかくすようになりました。
すると悪党たちは、村人が稲を刈ろうと思っている前に村をおそい、稲を刈り取って帰るようになりました。ついに村人は、竹槍や棒切れをもって、夜も警戒にあたるようになりました。
そんなわけで、周世の女たちは心配でなりません。悪党と戦うと、村の男たちが怪我をしたり、死んだりします。また悪党も人の子、年老いた母や、幼い子供もあろう。死んだら、私たちと同じように、母や子がなげくにちがいないと思いました。
そこで、周世坂のお地蔵さまに
「村の男たちに怪我がないように、悪党にも死人が出ないようにしてください。悪党が村にこないようにしてください。もし来たら、お地蔵さま、どうか追いはらってください」
と、たのみました。するとお地蔵さまは、とつぜん左、右へと、ゴト、ゴトと音をたてて動きだしました。
そんなある日のことです。村では寄り合いがひらかれ、明日から一斉に村の稲刈りを始めることに決まりました。寄り合いが終わり、村人が家に帰ろうとした時です。村の若者が
「悪党が来たぞ!みんな、竹槍や棒切れを持って、集まれ!」
「悪党だぞ!」
と、大声をあげながら、走って帰ってきました。「それ!」と、村の男たちは、竹槍や鎌や鍬をもって、村の境までかけ出して行きました。(つづく)
<前の記事 |
掲載紙面(PDF):
2022年2月12日号(2450号) 3面 (7,182,952byte)
(PDFファイルを閲覧するにはこちらからAdobe Readerを入手してください。)
[ 赤穂の昔話 ]
「昔話末永く語り継いで」切り絵作家・村杉創夢さん 2022年10月30日赤穂の昔話・第38話「尼子山落城」 2022年10月29日赤穂の昔話・第37話「きんこん坊主」 2022年07月16日赤穂の昔話・第36話「横谷の八畳敷き」 2022年05月21日赤穂の昔話・第35話「大蛇と入電池」 2022年04月29日赤穂の昔話・第34話「竹筒で塩を作る人を見た」 2022年03月19日赤穂の昔話・第33話「ととまの地蔵」(下) 2022年03月12日赤穂の昔話・第32話「枯れ尾花」 2022年01月29日赤穂の昔話・第31話「東海山の観音様」(下) 2021年11月27日赤穂の昔話・第31話「東海山の観音様」(上) 2021年11月11日赤穂の昔話・第30話「とんぼ塚」 2021年10月30日赤穂の昔話・第29話「妙道寺の阿弥陀さま」 2021年08月28日赤穂の昔話・第28話「猫岩の狐」 2021年07月31日赤穂の昔話・第27話「蛸の足うまいか」 2021年07月17日赤穂の昔話・第26話「熊見川の由来」 2021年06月27日
コメントを書く