赤穂の昔話・第26話「熊見川の由来」
2021年06月27日
切り絵・村杉創夢
ですから、「くまみがわ」というのは、曲がりくねった川ということになります。この川に頑丈な堤防ができるまでは、上郡から南は、くねくねと曲がりくねって水が流れていたために、こういう名前がついたのでしょう。
しかし、この名前の由来について、つぎのような話が伝わっています。
昔むかし、聖徳太子の補佐役をつとめた四天王の一人に、秦河勝という人がいました。年老いてからは、「大化の改新」など政治の混乱にまきこまれるのがいやで、坂越にやってきました。河勝は坂越を本拠に千種川流域の水田開発や、養蚕の普及につとめて、この地方を大変発展させました。
ところが、揖保川流域の古くからの豪族が千種川流域の土地を自分たちのものにしようと、矢野の豪族を誘って周世坂を越えて攻めてきました。
河勝は家来を集めて、戦いの計画を考えさせましたが、よい案がでません。そのうち敵は高野までやって来ました。その夜は高野で英気を養って、翌日は一気に、河勝の本陣である坂越を攻撃する計画のようでした。
河勝は家来に、十五歳くらいの娘を十人集めさせ、その娘に秘策を教えました。真夜中に、娘をつれた河勝の軍団は、ひっそりと高野に進みました。
しばらくすると一人の娘が、「熊を見たあー、助けてえー」と、敵陣にとびこみました。続いて、「虎が出たあー、助けてえー」「大蛇がきたあー、助けてえー」と次々と娘が敵陣にとびこみました。
女の声で助けを求められた敵の兵士は寝ぼけなまこで右往左往しました。そこを一挙に河勝の軍が攻め、敵を滅ぼしてしまいました。
この「熊を見た」と叫ぶ計略から、「熊見川」という名がついた、という話です。(赤穂市教育委員会刊『赤穂の昔話 第二集』・「熊見川の由来」より)=切り絵・村杉創夢
<前の記事 |
掲載紙面(PDF):
2021年6月26日号(2422号) 3面 (7,070,452byte)
(PDFファイルを閲覧するにはこちらからAdobe Readerを入手してください。)
[ 赤穂の昔話 ]
「昔話末永く語り継いで」切り絵作家・村杉創夢さん 2022年10月30日赤穂の昔話・第38話「尼子山落城」 2022年10月29日赤穂の昔話・第37話「きんこん坊主」 2022年07月16日赤穂の昔話・第36話「横谷の八畳敷き」 2022年05月21日赤穂の昔話・第35話「大蛇と入電池」 2022年04月29日赤穂の昔話・第34話「竹筒で塩を作る人を見た」 2022年03月19日赤穂の昔話・第33話「ととまの地蔵」(下) 2022年03月12日赤穂の昔話・第33話「ととまの地蔵」(上) 2022年02月12日赤穂の昔話・第32話「枯れ尾花」 2022年01月29日赤穂の昔話・第31話「東海山の観音様」(下) 2021年11月27日赤穂の昔話・第31話「東海山の観音様」(上) 2021年11月11日赤穂の昔話・第30話「とんぼ塚」 2021年10月30日赤穂の昔話・第29話「妙道寺の阿弥陀さま」 2021年08月28日赤穂の昔話・第28話「猫岩の狐」 2021年07月31日赤穂の昔話・第27話「蛸の足うまいか」 2021年07月17日
コメントを書く