赤穂の昔話・第25話「節句の田んぼすき」
2021年04月24日
「おーい。今日は牛の節句やで、牛を川へつれていって、洗てやろやないか」
みんなつれだって、牛を追って、川へ行きました。
ところが、この村に一人のアマノジャクな若者がいました。その若者は
「わしはいまから田んぼをすくんや」
といって、田んぼに牛を追っていきました。
この若者は、いつもみんなと反対のことばかりしました。みんなが山へ行くと、一人だけ川へ行き、みんなが仕事を休むと、一人だけ働きはじめるというぐあいでした。
みんなが川で牛を洗ってやり、牛を河原で休ませているころ、アマノジャクの若者は田んぼをすいていました。
ところが、突然田んぼの中から水が湧き始め、みるみるうちに泥田になってしまいました。泥の中にひきこまれそうになった若者はあわてて大声でさけびました。
「助けてくれ! 誰かはよう来とくれ」
でも、みんな遠くの河原へ行っており、近くには誰もいませんでした。
やっとのことで、若者だけは泥から抜け出すことができました。泥田になった田んぼをみると、牛も、すきも、飲み込まれてしまいました。
それからというもの、その田んぼは、田植えに入ることができない底なしの泥田になってしまいました。有年に伝わるお話です。(赤穂市教育委員会刊『赤穂の昔話』・「節句のたんぼすき」より)=切り絵・村杉創夢
<前の記事 |
掲載紙面(PDF):
2021年4月24日号(2414号) 3面 (6,447,286byte)
(PDFファイルを閲覧するにはこちらからAdobe Readerを入手してください。)
[ 赤穂の昔話 ]
「昔話末永く語り継いで」切り絵作家・村杉創夢さん 2022年10月30日赤穂の昔話・第38話「尼子山落城」 2022年10月29日赤穂の昔話・第37話「きんこん坊主」 2022年07月16日赤穂の昔話・第36話「横谷の八畳敷き」 2022年05月21日赤穂の昔話・第35話「大蛇と入電池」 2022年04月29日赤穂の昔話・第34話「竹筒で塩を作る人を見た」 2022年03月19日赤穂の昔話・第33話「ととまの地蔵」(下) 2022年03月12日赤穂の昔話・第33話「ととまの地蔵」(上) 2022年02月12日赤穂の昔話・第32話「枯れ尾花」 2022年01月29日赤穂の昔話・第31話「東海山の観音様」(下) 2021年11月27日赤穂の昔話・第31話「東海山の観音様」(上) 2021年11月11日赤穂の昔話・第30話「とんぼ塚」 2021年10月30日赤穂の昔話・第29話「妙道寺の阿弥陀さま」 2021年08月28日赤穂の昔話・第28話「猫岩の狐」 2021年07月31日赤穂の昔話・第27話「蛸の足うまいか」 2021年07月17日
コメントを書く