赤穂の昔話・第21話「蛇淵のお薬師さん」
2020年11月14日
元禄元年、大洪水があり、水が引いたあと、蛇淵に見たこともない石があるのに気がつきました。村の人たちは不思議に思い、
「これは、ただの石ではないぞ。あげて見んか」
と言い出し、皆で引き上げました。
見ると、石に刻まれたお薬師さんです。皆が驚き、しばらく見入っていました。
「このまま放っておくとばちがあたるぞ。どこから来られたんか知らんが、ここで、お止りになったことは、わしらと、ご縁があるんやで」
「ほんまや。おまはんの言う通りや。そまつにはできんぞ。お堂を建てて、皆でお祀りせんか」
ということになりました。
その夜のことです。お薬師さんが枕もとに立たれ、
「このままの場所で祀れ」
と、お告げがあり、蛇淵にお祀りしました。
それから、何百年もの間、お薬師は蛇淵の土手で、雨の日も風の日も、村の人の仕事ぶりをじっと見て、村の人を守ってくれました。
そして、いつの頃からか、「蛇淵のお薬師さんは、雨乞いの願いを聞いてくれる」と言われるようになりました。
昔から、蛇は水の神様といわれており、雨が降らず、日照りが続き、田圃の水がなくなりだすと、村の人は、お薬師さんを、蛇淵の水できれいに洗って、雨をお願いしました。
ある年の夏、かんかん照りが続いて田んぼ水がなくなったとき、お百姓さんたちが言い伝えを信じて蛇淵のお薬師さんに雨乞いをお願いしたところ、三日目に大雨が降ったということです。(赤穂市教育委員会刊『赤穂の昔話 第二集』・「蛇淵のお薬師さん」より)=切り絵・村杉創夢
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2020年11月14日号(2392号) 2面 (4,339,148byte)
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