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赤穂の昔話・第24話「鯰峠の伝説」(下)

 2021年02月27日 
 
 若者と娘が池の主の大鯰だったことを知ってから村の若者は池のほとりや峠には近づかなくなりました。二匹の鯰は、何の邪魔者もなく、峠の逢引をつづけることができました。
 その頃、今の落地(おろち)のあたりは大きな池で、そこには一匹の大蛇がすんでいました。二匹の鯰が逢引きしているうわさを聞いた大蛇は、これを襲おうとひそかにねらっていました。ある闇の夜、二匹の鯰の油断を狙って、大蛇はおそいかかり、一気に呑みこんでしまいました。
 その後、何年かたちました。弘法大師がこの峠をお通りになり、二匹の鯰のあわれな恋物語をお聞きになりました。大師は、供養のために峠に石仏を刻んで建てられ、この峠を「鯰峠」と名づけられました。そして、主を失った大池と馬路池の水が絶えぬようにと、大蛇の棲む池の水を二つの池に移してしまわれました。水がなくなった池に住んでいた大蛇は、この池をすてて山の奥へと逃げていきました。
 水のなくなった池のあとは、広い田畑となり、人びとが移り住むようになりました。これがいまの落地です。昔、大蛇がすんでいたことからこう呼ばれ、のちに「落地」の字があてられたと伝わっています。(赤穂市教育委員会刊『赤穂の昔話』・「鯰峠の伝説」より)=切り絵・村杉創夢
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掲載紙面(PDF):
2021年2月27日号(2406号) 3面 (8,072,256byte)
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